隣地買収の価格っていくらが適正なの?限定価格の考え方と求め方

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不動産の取引では、自分が「隣の土地を買いたい」というケースや、隣の人から「土地を買ってもらえませんか?」というケースがあります。

これらは「隣地買収」の話です。

昔から「隣地は借金してでも買え」という格言があるくらい高く買っても損はないと言われています。

高く買うと言っても、無限に高く買うことは適切な買い方とは言えません。

隣地買収にも適切な価格というものが存在します。

隣地買収を考えている人が悩む疑問

  • 「隣地買収って、どのような取引なの?」
  • 「隣地買収の場合、どのくらいが適正価格なの?」
  • 「隣の土地を買いたいのだけれど、価格はどのように計算されるの?」

そこでこの記事では、「隣地買収」にフォーカスしてお伝えします。

この記事を読むことであなたは、隣地買収の適正価格や、限定価格の考え方について知ることができます。

ぜひ最後までご覧ください。

1.隣地買収は市場が限定される特殊な取引

隣地買収は市場が限定される特殊な取引です。

SUUMOアットホームなどに物件広告が出回るわけではなく、本人と隣地所有者しか知らない閉じた関係の中で行われる取引となります。

通常のマンションや戸建ての売却のように、SUUMOやアットホームのインターネットで情報が出回る状態を公開された市場と呼びます。

公開された市場は、不動産を売りたい、もしくは買いたいと思う人たちが自由に参入し、退出もできる市場です。

このように公開された市場で成り立つ普通の取引価格を「正常価格」と呼んでいます。

一方で、隣地買収は取引に参加する人が、本人と隣地所有者しか存在せず、当事者が限られた限定的な市場です。

このように限定的な市場で成り立つ特殊な取引価格を「限定価格」と呼びます。

限定価格とは、きちんと概念が存在する価格です。

限定価格とは

国土交通省が示している不動産の評価額を決める鑑定評価基準においては、限定価格を以下のように定義しています。

限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。

※出典:Wikipedia「限定価格」より

隣地買収は、上記の長い定義の中の、「不動産と取得する他の不動産との併合」の取引に該当します。

鑑定評価基準では、限定価格が起こりうる例として、以下の3つを例示しています。

限定価格が起こりうる3つの事例

  1. 借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
  2. 隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
  3. 経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合

例示列挙の中では、借地権者が底地を購入する場合も掲げています。

底地とは、借地権が設定されている土地のこと

土地を借りている人が、借りている土地を購入するパターンも限定価格であるといっています。

つまり、「隣地所有者が隣地を購入するパターン」と「土地を借りている人が借りている土地を購入するパターン」は、基本的に一緒ということです。

隣地買収することで土地の価値は上がる

どちらの取引も、基本的に購入することで良くなる方向に向かいます。

借地権者か底地を買えば、土地と建物が1人の完全所有権になるため、価値が上がります。

つまり借地だけで売るよりも、底地を買ってから売った方が、購入してくれる人が多く現れ、価格も上がります。

また、隣地買収も、購入することで地型が良くなったり、間口が広がったりします。

隣地買収前の土地を単独で売るよりも、買収した後の土地の方が価値は上がり高く売れるようになります。

例えば上図のような例で考えてみます。

元々の持っている土地がAで、買収する隣地がBだとします。

AはL字型の不整形地で、あまり使い勝手が良くない土地です。

Aのままだと土地の形が不整形ということで、価値は低いままとなります。

ところが、AがBを購入すると、状況が一変します。

まず、地型が良くなり、間口も広がることで土地が使いやすくなります。

また、角地となることで視認性が上がり、日照や眺望も良くなります。

商業地の土地なら角地で視認性が上がることは売上アップにもつながります。

また、オフィスビルなどでも地型が良くなると、貸し出すフロアの専有部の空間の形も良くなり、賃料アップに繋がります。

B地はA地よりも小さな土地ですが、A地の所有者はB地を購入することで、大きな恩恵を被ることができます。

一方で、全くの第三者がB地を購入することもできます。

しかしながら、第三者がB地を購入したとしても、B地は小さな土地のままです。

第三者がB地を買っても、小さな建物しか建てることができないため、B地には大した価値を見出すことができません。

B地を購入して大きな恩恵を受けることができるのは、A地所有者しか存在せず、よってA地所有者はB地を第三者か購入するより高く買ったとしても理にかなっているのです。

このように、限定価格の考え方は、不動産は特定の不動産を購入することで、その不動産の価値が高くなることが前提にあります。

隣地買収の価格は限定価格となり、正常価格よりも高くなるというのが基本です。

以上、ここまで隣地買収は市場が限定される特殊な取引であることについて見てきました。

では、隣地買収価格はどのように算出されるのでしょうか。

そこで次に、隣地買収価格の求め方について解説いたします。

2.隣地買収価格の求め方

ステップ1.まずは増分価値を求める

隣地買収では、隣地を併合して一体地になることで、増分価値が生じます。

具体的には、不整形地であった土地が整形地になったり、中間画地(一方向にしか道路に接していない土地)であった土地が角地になったりすることです。

例えば前章で示した不整形の土地Aと小さな土地Bの併合を考えます。

増分価値の計算式

増分価値の計算式

最初にAとBのそれぞれの土地価格を求めす。

Aは不整形という欠点があり、Bは小さいという欠点があり、それぞれの価格は高くはありません。

次にAとBの一体地(Cとする)の価格を求めます。

Cは角地となり、整形で、しかも土地の面積も広く、使い勝手の良い土地になります

使い勝手の良い土地であるため、Cの土地はAとBの価格を合計した物よりも高くなります。

そして、併合後の増分価値を求めます。

増分価値は一体地Cから不整形の土地Aと小さな土地Bの価格を引いたものになります。

ステップ2.増分価値の配分方法

増分価値を求めたら、その増分価値をそれぞれAの土地とBの土地に配分します。

ここで、増分価値をγと定義します。

増分価値γは式で表すと以下のようになります。

増分価値γ = Cの土地価格 - (Aの土地価格 + Bの土地価格)

次にγをAに配分される増分価値をαとBに配分される増分価値をβに分けることを考えます。

γとα、βの関係は以下の通りです。

γ = α + β

つまり、Cの価格は以下のようになります。

Cの土地価格 = (Aの土地価格+α) + (Bの土地価格+β)

もし、βが分かれば、AがBを購入する適正価格は「Bの土地価格+β」ということになります。

αとβを求めるには、γをどのようにαとβに分けるのかという問題が発生します。

ここで、γを分けるには、以下の4つの方法があります。

配分方法 内容
単価比による方法 併合前の画地の質的要因である単価の比により配分する方法
面積比による方法 併合前の画地の量的要因である面積の比により配分瀬売る方法
総額比による方法 併合前の画地の総額に応じて配分する方法
買入限度額比による方法 併合前の画地が互いに相手画地を買っても損はないとする購入の限度額の価額比により配分する方法

配分額は、4つの方法で求めた価格を総合的に勘案することで求めます。

以上、ここまで隣地買収価格の求め方について見てきました。

では、隣地買収価格は具体的にどのように計算されるのでしょうか。

そこで次に、隣地買収価格の具体的計算例について解説いたします。

3.隣地買収価格の具体的計算例

再度、下図のAとBを例に価格を求めます。一体地をCとします。

前提とする条件は以下の通りです。

  • Aの価格:1,200万円(300㎡、単価は40,000円/㎡)
  • の価格:500万円(100㎡、単価は50,000円/㎡)
  • の価格:2,000万円(400㎡、単価は50,000円/㎡)

最初に増分価値を求めます。

増分価値 = Cの価格 - (Aの価格 + Bの価格) = 2,000万円 - (1,200万円 + 500万円) = 300万円

次に増分価値を4つの方法でBへの配分βを求めます。

単価比による方法

β = B土地の単価 ÷ (B土地の単価 + A土地の単価) = 50,000円/㎡ ÷ (50,000円/㎡ + 40,000円/㎡) ≒ 56%

面積比による方法

β = B土地の面積 ÷ (B土地の面積 + A土地の面積) = 100㎡ ÷ (100㎡ + 300㎡) ≒ 25%

総額比による方法

β = B土地の総額 ÷ (B土地の総額 + A土地の総額) = 500万円 ÷(500万円 + 1,200万円) ≒ 29%

買入限度額比による方法

β = (C土地価格-A土地価格)÷{(C土地価格-A土地価格)+(C土地価格-B土地価格)} = (2,000万円-1,200万円)÷{(2,000万円-1,200万円)+(2,000万円-500万円)} ≒ 35%

以上、単価比による方法では56%、面積比による方法では25%、総額比による方法では29%、買入限度額比による方法では35%として求められました。

4つの方法で求めた配分率は、それぞれ妥当性があるものとし、4つの値を平均してβを求めます。

βの割合 = (56% + 25% + 29% + 35%) ÷ 4 = 36%

よって、増分価値γの36%がβ、残りの64%がαということになります。

β = 増分価値 × βの割合 = 300万円 × 36% = 108万円

以上より、Bの土地価格にβを加算した価格がAの買い取っても良い価格ということになります。

Aが買い取っても良い価格 = Bの価格 + β = 500万円 + 108万円 = 608万円

これは、本来、第三者が買うBの価格は500万円ですが、AがBを買うなら608万円まで出しても妥当であるということを意味します。

隣地買収後の併合価格から増分価値を求め、それを配分した額が隣地買収の適切な額ということになります。

4.まとめ

以上、ここまで、隣地買収の適正価格や、限定価格の考え方について見てきました。

隣地買収は、増分価値が発生するため通常購入するよりも高くなります。

この記事で紹介した方法を踏まえ、相手と交渉し、適切が価額で購入するようにしましょう。

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